雑感9 ホンコン編について

 BS11の「Zガンダム」再放送は20話まで消化。シリーズでも特に人気エピソードの19話「シンデ
レラ・フォウ」と20話「灼熱の脱出」を通過しました。本放送当時、17話から続くホンコン編で作品
の評価が一気に上昇し、20話がピークだった印象があります。シリーズ全体としては36話「永遠
のフォウ」が最も人気の高いエピソードですが、話の流れとしてはホンコン編が一番盛り上がった
感じがしました。アニメ誌や読者の反応も、この頃まではまだ好意的な意見が多かったように思
います。その後どんどん批判が増えていってしまうのですが(苦笑)。
 個人的に初めてホンコン編を見た時は、「富野作品でここまでストレートな恋愛劇をやるんだ」と
いうのが新鮮でした。19話はその最たるもので、シンデレラになぞらえたカミーユとフォウの刹那
的な逢瀬は、中学2年生の私にとっては少々恥ずかしさを覚える甘酸っぱさがありました。前作
「エルガイム」が特に恋愛感情にスポットを当てた作品だっただけに、その雰囲気を引きずってい
ると見えなくもなかったり?ともかく、富野作品でここまで真っ正面から青春ドラマを描いたのは後
にも先にも「Zガンダム」だけではないかと。
 一方でカミーユとフォウの交感について、作中ではニュータイプゆえの惹かれあいとして描かれ
ていましたけど、個人的には今もって「一目惚れによる恋愛」というイメージが拭えなかったりしま
す。まさしく19話でベルトーチカが「一目惚れっていうのよ」と指摘してカミーユが否定していました
が、当時視聴していた私にもやっぱりそう見えました。ファーストガンダムのアムロとララアのよう
な精神的邂逅とはまた違う描写だったので、富野監督がどういう意図や解釈で描いていたのか気
になるところです。ただホンコン編を含めた劇場版2作目のサブタイトルが「恋人たち」だったこと
からも、どちらかと言うと恋愛に主軸を置いた描写だったのではないかとも思えたり。それだけに
35話・36話のキリマンジャロ編はやや蛇足に見えなくもなく、劇場版で丸々カットしたのも納得かな
という感じがしました。その後に続く悲劇の幕開けとしては必要なエピソードだったと思いますが
(だからこそカミーユが精神崩壊しない劇場版ではオミットされた?)。
 そしてホンコン編のクライマックスとなった20話。シャトル用ブースターに乗っかってガンダムMk-
2が宇宙へ脱出するというシリーズ最大のトンデモ展開ですけど(笑)、その場面に流れる挿入歌
「銀色ドレス」の美しい曲調とあいまって、なんとなく納得できてしまう演出の見事さは特筆ものか
と。希望溢れる高揚感という点でも、最高潮に達した感がありました(これ以降はどんどん救いの
ない展開になりますし)。やってることは大嘘なのに演出の力で説得力を生み出すというのは後に
「逆襲のシャア」のクライマックスでもやっていますが、既にその片鱗を見ることが出来るという意
味においても、この回は必見の名エピソードと言えるのではないでしょうか。ただ、あの状況でい
つホンコン土産をガンダムに持ち込んだのかは不思議でなりません(苦笑)。
 カミーユの成長物語としての「Zガンダム」は20話がピークで、この先は政治劇や組織的な抗争
劇が話の中心になっていきます。アニメ誌が堂々と「Z」批判をするようになるのもこの頃からで、
視聴者が見たかった物語と作品の方向性に乖離感が増していくのが21話以降の「Zガンダム」だ
ったとも言えそうです。

                                                   (17/06/14)


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