雑感10 Zガンダム登場とアポロ作戦
BS11の「Zガンダム」再放送は24話まで進行。舞台が宇宙に戻り、主役メカであるZガンダムも
登場、更に話が盛り上がって・・・こないのが実に困りものです。この印象は本放送を見ていた頃
から変わらないと個人的には思っています。
そもそもZガンダム初登場の21話からして、カミーユのピンチに主役メカ参上でぐぐっとテンショ
ンが上がる展開のはずなのに、Zガンダムはウェーブライダーのまま変形せず、しかもカミーユが
乗り込む描写もなしという薄味加減。ほぼ同じ展開だった「ダンバイン」29話(「ビルバイン出現」)
と比べると、話の盛り上がり方の差は歴然です。ならば次の話で満を持してモビルスーツ形態へ
変形かと期待していたら、22話冒頭あっさりモビルスーツ姿でデッキに立っていて拍子抜け。スポ
ンサーへのいやがらせでわざと格好良い場面を作らないようにしているのではないかと勘ぐりた
くなる扱いです(笑)。この辺は当時「アニメック」でも指摘されていて、同様に落胆した視聴者が
多かったであろうことが伺えます。Zガンダム自体カミーユの設計データが元になっていて実質
彼専用機のはずなのに、本人は特に喜んでいる様子もなくあっさりガンダムMk-2から乗り換えて
いますし、とにかく「アニメ的なお約束」をあえて無視しているように感じられなくもありませんでし
た。劇場版では更に扱いが悪くなっていて、Zの設計にカミーユは関わっておらず、単にパイロット
としての腕の良さを見込まれて新型機をあてがわれた程度の描写になっています。「Zガンダムは
現実認識の物語」と本放送当時から富野監督はたびたび口にしていますが、こういう肩透かしな
描写もその一つなのでしょうか。
劇場版と言えば、23・24話のいわゆる「アポロ作戦」が丸々カットされたのが劇場版2作目最大
の不満でした。シリーズで初めてティターンズとエゥーゴが正面から大規模にぶつかった作戦で、
唯一と言っても良いシロッコの天才ぶりと狡猾さが見られるエピソードなのに、これをカットしてし
まったせいで劇場版のシロッコは「カミーユがあそこまで激怒して倒さなければならないほどの敵
だったの?」という印象になってしまった気がします(笑)。もっとも劇場版「Z」のカミーユがシロッ
コに怒っていた理由は「人間を家畜扱いしていること」だったので、彼が指揮官として天才でなく
ても物語的には構わなかったのかもしれませんけど。他にもこの23・24話は一般市民がティター
ンズをどういう目で見ているかとか、ジェリドの精神的な成長とか割と重要な要素があると思える
のですが、劇場版は尺の都合からそこまで拾う余裕はなかったということでしょうかねぇ。
それと、21話から背景の宇宙がやたらと青くなっていることに気付いた方もおられるかもしれま
せん。あれはスポンサーから「宇宙が真っ黒だとモビルスーツがよく見えない」とクレーム(?)が
あったため、ああいう処理にしたと当時のアニメ誌には書かれていました。リックディアスの一般
機が当初黒かったのに8話あたりから全部赤色になったのも同様の理由だったり。ただ製作サ
イドも不自然と思ったのか、後番組の「ZZ」からは通常の宇宙空間は黒多め、コクピット内に映
る宇宙は青多めと描き分けるようになりました。スポンサーの横やりひとつで設定の統一性が
失われてしまうことに、当時は製作の裏事情が垣間見えてなんとなく不快だったことを覚えてい
ます。この辺の経緯は最近あまり知られていないのではないかと思い、あえて触れてみました。
(17/07/12)
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