雑感11 複雑怪奇な変形モビルスーツ

 BS11の「Zガンダム」再放送は30話「ジェリド特攻」まで進行。元々ジェリドはこの回で死ぬ予定
でしたが、ジェリド好きスタッフの嘆願により延命となったそうな。結果、彼は36話でフォウの死に
関与し、49話ではカミーユに対し「俺は貴様ほど人を殺しちゃいない」と作中で唯一主人公を全否
定したキャラにまでなったのですから、この延命措置は正しかったと言えるかも?
 そんなジェリドがこの回まで搭乗していたのが、可変モビルスーツのガブスレイです。21話のZガ
ンダム登場以降更に可変モビルスーツが増える「Zガンダム」ですが、なかでもこのガブスレイが
一番よく分からない変形をするモビルスーツという印象が個人的にはあります(笑)。何せプラモデ
ルを使って説明書を見ながら自分の手で実際に変形させても、どこがどうしてあの形になるのか
さっぱり分からないのですから。しかもモビルアーマー体型が飛行形態と呼ぶには妙に不格好で、
セミのような昆虫のような、なんだかよく分からないものに変形するイメージが拭えません。同時
期に登場したメタス(元々はハンプラビの仮名称だったそうで、「目が多い」→「目足す」→「メタス」
というダジャレだったとか)なんかは実に変形がシンプルで、いかにも飛行ユニットに変わる印象
なのに、何故ガブスレイはこれほど複雑で不思議な変形機構になったのやら。
 そもそも「Zガンダム」に変形要素を持ち込んだのは富野監督によるアイディアだったそうな。前
年に放送されたアメリカ製アニメ「トランスフォーマー」で車が瞬時にロボットへ変形するのを見て、
「これだ!」と思ったとか。日本のロボットアニメは変形シーンも一つの見せ場として外連味を持
たせるのが常道ですけど、アメリカのアニメではさっさと変形させているのが衝撃的だったようで
す(もっとも「マクロス」のバルキリーあたりから日本のロボットアニメも変形シーンがスピーディー
になってきましたが)。スポンサーであるバンダイとしてはプラモデルのコスト面からもモビルスー
ツを変形させることに乗り気でなかったものの、最終的には富野監督の提案を呑む形になった
とかなんとか。
 そんなこんなで変形要素を取り入れた「Zガンダム」は、変形パターンの見本市であるかのよう
に(苦笑)様々な変形モビルスーツが登場することに。元は同一のデザインから分岐したメッサー
ラとギャプラン。当時円盤獣と揶揄された(笑)アッシマー。バンダイからZガンダムのデザイン案と
して提示されたものを流用したサイコガンダム。更にはエイのような異形感のあるハンブラビ、も
はやモビルスーツと呼んで良いのかすら怪しくなる(苦笑)ガザCやバウンドドック等々、よくもこれ
だけ多種多様な変形バリエーションを思いついたものだと感心するほど、それまでのモビルスー
ツのイメージを覆す機体が次々と出てきました。これらがファーストガンダムのファンからいっそう
拒絶反応を引き出し、「Zガンダム」批判を加速させる一因になったことは否めませんが、その後
に続くガンダムシリーズへデザイン面で大きく間口を広げたこともまた確かだと思います。とは言
え放送当時はやっぱり違和感のほうが大きく、私もガザCのデザインを初めて見た時は「何故ジ
オン系列のモビルスーツがこんな形に?」と反感を抱いたものです。最近でこそ「Zガンダムのモ
ビルスーツデザインは現代でも通用する」といった評価がされていますけど、当時としては時代を
先取りしすぎていたと言えるかもしれません。
 余談ですが、当初Zガンダムの頭部は変形の際邪魔になるのでアンテナがないデザインでした
(前期オープニングでシルエットのZガンダムにアンテナがないのもそのため)。ですが当時コミッ
ク版「Z」を描いていた近藤和久氏がアンテナの変形パターンを提案したため、現在のような4本
アンテナのデザインになったそうです。アンテナのない初期案のデザインも見たことがありますけ
ど、やっぱり違和感がありました。つくづく現行デザインに決まって良かったと思います。

                                                  (17/08/23)


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