雑感13 小説版3巻について
「Zガンダム」雑感。今回は以前書いた小説版についての続きです。前は小説版の2巻まで触れ
たので、3巻について。
小説版3巻から徐々にテレビシリーズとの相違が大きくなっていきます。3巻はフォウのエピソー
ドに焦点を当てていて、ホンコン編からキリマンジャロ編まで一気に話が進行。1巻・2巻で15話ま
でノベライズ化したのに対し、3巻は16話から35話までなので、かなりのハイペースぶりです。ただ
テレビシリーズのストーリーをそのまま詰め込むのはさすがに無理だったようで、21話のZガンダ
ム登場まではアニメとほぼ同じですが、以降はブレックス暗殺のシーンを挟んで、サラとカツの邂
逅エピソードである25話、そして途中をすっ飛ばしていきなり35話にジャンプしています。なので、
それまでは小説版の刊行がテレビシリーズの後追いになっていましたけど、3巻でテレビ放送に
追いついたか追い越した記憶があります(あくまで私の漠然とした記憶なので、違っていたら済み
ません)。細かい点では、シャアがブレックスと一緒に地球へ降りたままになっているので、35話
のエピソードで百式に乗ってZガンダムと共に地上へ降下するのはアポリーだったり、キリマンジ
ャロ攻略ではシャアがディジェに乗っていて、アムロはリックディアスを使っていたりといった設定
の差異も見受けられます(もっとも富野監督自身それを忘れたのか、4巻冒頭ではいきなりアム
ロがディジェに乗っていたりしますが)。
あとテレビシリーズでは4クール目から登場した軍医のハサンが早くも登場し、カミーユのメンタ
ルケアという重要な役回りで以後印象に残るキャラとなります。ムック本に載った裏話によると元
々ハサンはもっと早い時期からシナリオには出ていたが、尺の都合で出番が全てカットされてしま
い初登場が遅れてしまったそうな。なので小説版のほうが本来の構成に近いということなんでしょ
うね。
カミーユとフォウのエピソードにスポットが当てられていることもあり、この3巻は富野小説のなか
でもひときわ青春小説している印象があります。特にホンコン編のあたりは読んでいてちょっと恥
ずかしくなるようなクサい(?)描写も。同時期に小説雑誌「野生時代」で「リーンの翼」の連載をし
ていて、そちらは徹底してエログロな内容だったので、こういう話も書けることに少し驚いたもので
した(後に小説版「F91」で更に青春小説としての完成度を高めることに)。それだけに、カミーユと
フォウの関係はテレビシリーズよりももっと恋愛に近いものに感じられて、アニメよりも感情移入し
やすくなっていると思ったものです。後に富野監督が「小説版の3巻は当時の編集者に良かった
と誉められたが、結局5冊も書いて良かったのは1冊だけかよ」と述懐していますけど(笑)、確か
に富野小説の新しい一面を開いた巻だったのかもしれません。
(17/12/10)
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