雑感17 コミック版について
再放送は終わりましたが、「Zガンダム」雑感はまだ続きます(笑)。今回は当時コミックボンボン
に連載されていたコミック版「Z」について。作画を担当していたのは、前年「MS戦記」で衝撃的な
デビューを飾った近藤和久氏。実際の戦闘機や戦車を参考に詳細なディテールが描き込まれた
モビルスーツは近藤ディテールと呼ばれ、プラモデルのみならず「Z」本編の作画にも如実に影響
を及ぼしていました。時折やたらと描き込みされたモビルスーツの作画が散見されのは、近藤氏
の絵に触発されたものだったかと。
そんなコミック版「Z」は、基本的にはアニメとストーリーを同じくしながらも設定や展開に結構な
違いが見て取れます。前回の雑感で書いたように、近藤氏はサンライズから一ヶ月ぶんのシナリ
オを渡されて漫画化していたそうなので、ストーリーに関してはコンテで変更される以前のシナリ
オに基づいたものだったと考えることができそうです。
モビルスーツの設定については近藤氏の独自解釈がふんだんに盛り込まれていました。例えば
序盤に登場した3機のガンダムmk-2、アニメでは全て同一デザインでしたけど、コミック版ではそ
れぞれにバックパックのデザインが異なっていました。3号機のみアニメと同じでしたが、1号機・
2号機はアニメ誌等で一番最初に公開された準備稿のデザインを使っていて、いかにも試作機
ゆえのバージョン違いを思わせる仕様になっていました。
他にも、ディジェが当初の設定通りアクシズ軍の機体として登場したり(デザイナーもその想定で
デザインしたそうで、アニメでいきなりアムロが乗っていて驚いたそうな)、バーザムがモノアイで
はなくツインアイになっていて、更にはガンダムmk-2のバルカンを装備していたり(バーザムがガ
ンダムmk-2の後継機という後付け設定が生まれる根拠になった?)、コミック版オンリーの描写
が多々あります。あとGディフェンサーが嫌いだったのでフルアーマーガンダムmk-2という独自設
定を出したり(笑)、最終回にはゴブリンというオリジナルモビルスーツも登場させています。ジ・O
が小林誠氏のデザイン原案に近いものになっていて、両腕がジオングのように有線サイコミュに
なっていたり、キュベレイが後に近藤氏オリジナルモビルアーマーとして登場するG-3(ゲー・ドラ
イ)に近いデザインだったりと、アニメとの違いを探すのも楽しみなコミックでした。
後に近藤氏は独自設定・ストーリーの漫画「サイドストーリー・オブZ」を発表。いち早くZ-MSVの
百式改やガンダムmk-3を登場させたり、アニメではややこしかったモビルスーツの分布図をすっ
きりまとめたりと(ツインアイのモビルスーツは連邦軍、モノアイのモビルスーツはエゥーゴに区分
け)、アニメとは全く違う内容になっていました。個人的に近藤氏の作品で一番好きなのがこの
「サイドストーリー~」で、当時連載されていた「模型情報」や「Bクラブ」は新しい号が出るたびに
繰り返し読んだものでした。残念ながらバンダイが別の漫画を連載させるため中断させ、未完と
なってしまったのが惜しまれます。きちんと完結していたらどんな内容になっていたのか、今でも
気になっていたり(近藤氏曰く、もう続きを書くことはないそうな)。
85年当時は「Zガンダム」のみならず、「レイズナー」や「ダンクーガ」「飛影」といった他のロボット
アニメでも異様に描き込みが凄い作画が見られるようになって、メカ作画のクオリティが飛躍的に
向上した年でもありました(前年の劇場版マクロスやOVAの台頭も影響しているかと)。同時にリ
アルロボットアニメがピークを迎え、翌年から一気に衰退してしまうのもまた事実だったりしますが。
(18/02/14)
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