雑感19 続「Zガンダム」のプラモデル

 「Zガンダム」雑感、前回の続きです。アニメ内におけるモビルスーツの描写が雑だというのは本
放送当時から批判されていました。改めて再放送で見返してみると、20話あたりまではまだ凝っ
た戦闘シーンを見せようという工夫が毎回盛り込まれていたように思います。問題は主役であるZ
ガンダムが登場した21話以降で、次第に遠くからビームライフルを撃ち合うだけのシーンが増
え、ルーチンワークであるかのようにモビルスーツ毎の個性が感じられない戦闘描写になってい
きました。これにはデザインや設定の決定が遅れまくって、コンテを描く段階ではモビルスーツが
どんな武器を持っているのか分からなかったという事情もあったそうです(ちなみにサイコガンダ
ムmk-2が「Z」で変形しなかったのは設定が間に合わなかったため。「ZZ」でやっと変形を初披
露)。
 以前も書いたように、当時はアニメ誌による情報リーク合戦が過剰だったため、事前に公開さ
れた情報とアニメ本編の落差があったことも印象の悪さに繋がっていた気がします。例えばパラ
ス・アテネはシロッコが搭乗する機体として早い段階からアニメ誌で紹介されていたものの、実際
は一度も乗ることがありませんでした。途中でフル装備の設定も公開されましたが、アニメ本編で
は一回も使われなかったり(劇場版でリベンジを果たすかと期待したのですが、残念ながら未使
用)。他にもプラモデルオンリーで展開していたMSV(モビルスーツバリエーション)がアニメに登場
と期待を煽っておきながら、本編では完全にやられ役ばかりで、まともに活躍したのはアクト・ザク
と水中型ザクくらいだったりとか(ザクキャノンなんて格納庫で立っていただけ)、スポンサーに要
求されたから仕方なく画面に出した的な扱いが目に付きました(笑)。
 シリーズ後半になると事前情報との乖離感は更に増して、偵察型と紹介されたボリノーク・サマ
ーンは本編でそれらしい運用シーンが見られなかったり、ティターンズの新型量産機として登場し
たバーザムは一度も名前のあるパイロットが乗らなかったばかりか、出てきても撃墜されるだけと
いう酷い待遇で、しかも量産機の割に出番はかなり少ない印象でした。
 そんなアニメ本編の影響を受けてか、プラモデルのリリースもシリーズ後半になると失速。とりわ
け31話以降に登場したモビルスーツで当時キット化されたのはハンブラビとバイアラン、ディジェ、
キュベレイ、サイコガンダムmk-2くらいでした。それも1/144か1/220スケールのみ。バンダイがシ
リーズ終盤に登場した機体をプラモ化しないのは「ザブングル」の頃から慣例化していましたけど
も、一大ブームとなったガンダムの続編も同様の扱いだったのは非常に残念でした。私もシリー
ズ後半のモビルスーツでプラモデルを買ったのはバイアランだけでした(1/220スケールで安かっ
たので)。
 一方、「Z」放送開始の数年前から商品展開していたのが完成品キットとしてクオリティの高さを
アピールしていた「ハイコンプリート」モデル、略して「ハイコン」。金属パーツを取り入れたプラモデ
ルと超合金の中間みたいなもので、ガンダムに限らず様々なアニメのロボットがリリースされてい
ました。当時としてはそれなりに設定画に忠実なうえ、エルガイムmk-2やZガンダム、ZZガンダム
のようにほぼ完全変形を再現したキットもありました(特にZZは1/144スケールで完全変形する名
機)。通常のプラモデルと比べてお値段は少々張りましたが、私も幾つか購入。なかにはプロポー
ションを維持しつつ完全変形する「勇者ライディーン」なんて名キットもあって、いまでも所有してい
たりします。プラモデルを作る代わりに、こんな玩具も当時は買っていたものでした。
 ファーストガンダムほどのラインナップもなく、ブーム再燃とはいかなかった「Zガンダム」のプラ
モデル。ただ現在に至るも新規のガンプラが発売され続けるようになったのは「Z」の頃の商品展
開があったから、と見るのは贔屓しすぎでしょうか。少なくとも「Z」放送開始前はMSVのリリースも
一段落して、ガンプラの新作はもう出ない印象がありましたから(予定されながらもリリースされな
かったペズン計画なんてのもありましたけど)、途切れることなくコンスタントに新作が発売される
のが当たり前になったのは、「Z」以降と考えてよい気がします。

                                                                                                               (18/03/07)

※雑感補足

 「Zガンダム」放送終了後、90年代後半頃からそれまで未発売だったモビルスーツが次々とキッ
ト化され、2025年3月時点で残るは隠れハイザック(ハイザックカスタム)のみとなりました。とりわ
けディジェとバーザムはここ10年くらいで人気が急上昇し、ゲーム中心にバリエーション機が増え
ている状況です。本放送時は目立つほうではなかった機体が数十年をへて再評価され、プラモ
デル化されるという現象は時代の変化を感じさせます。毎年多くのガンダムゲームが発売され、
ゲーム内で機体を操作できるようになったことも一因ではないかという気がします。
 すでに隠れハイザックも通販限定でキット化された実績がありますけど、はたして市販化して
全モビルスーツコンプリートとなるのでしょうか。


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