雑感21 ガンダムは続く

 去年から長々と続けてきましたが、「Zガンダム」雑感もとりあえず今回でラストです。ゴールデン
ウィークにNHKで放送されたガンダム40周年記念の人気投票、そのなかで「Z」は作品部門で第
二位となりました(一位はもちろんファーストガンダム)。本放送当時はあれだけ叩かれまくったの
に、今ではファーストガンダムに次ぐ人気作となったのは色々と感慨深いものがあります。富野作
品はよく「10年早い」と言われますけど、「Z」が評価されはじめたのも90年代に入ってからでした
し、まさにその言葉通りだったのかなと思えます。
 「Z」の放送が終了した4年後にリリースされたCDのブックレットには「Zガンダムが低評価だった
のは、ウルトラマンを見たいと思っていた人達に武田信玄(その年のNHK大河ドラマ)を見せたこ
とによる誤解みたいなものだった」と、かなり苦しいフォローをした解説が掲載されていました(苦
笑)。よーするにファンが見たいと思っていたものと、制作陣が見せたいと思っていたものに齟齬
があったのではないかというのです。わざわざそんなフォローをする必要があるほどに、80年代
は「Z」に対する評価は低いものでした。他にも「Z」終了直後に出版されたムック本「Zガンダム大
事典」では、シナリオライターの會川昇氏が完膚無きまでにボロクソにけなした批判文を載せると
いった異常事態にもなっていました(数年後に別のムック本で謝罪していましたけど)。ですが、そ
んな世間の評価とは裏腹にガンダムシリーズの作風はファーストよりもむしろ「Z」がベースとなっ
て継続していきます。
 「Z」で消化不良だった部分を昇華して完成させた「逆襲のシャア」はもとより、ファーストガンダム
への原点回帰を標榜して製作された「F91」も根底にある作風はどちらかというと「Z」寄りだったと
思います。そして富野ガンダムとしては最後の宇宙世紀作品となった「Vガンダム」は「Z」以上に
暗くドロドロしたテイストで、狂気の度合いに関しては「Z」以上と言える内容でした。それ以降、他
の監督が手がけた作品についても、「Z」を踏襲するような人間関係や政治劇、悲劇を盛り込んだ
ものが多く目につきます。個人的な感想ですけど、ガンダムシリーズが世間一般の認知度に比し
て宮崎アニメのような普遍性を獲得しえていないのは(タイトルは聞いたことがあるが見たことは
ない、みたいな)、単にロボットアニメだからというだけではなく、シリアスすぎる作風やとっつきにく
いストーリーも一因なのではないかと、そんなことを思ってみたり。そして、シリーズのそういう方向
性を決定づけたのは「Zガンダム」だったんじゃないかと愚考する次第です。
 「Zガンダム」には中二病真っ盛りだった当時の私(笑)を惹き付ける不思議な魅力(魔力と言っ
ても良いかも)がありました。多くの人の目には意味不明だったカミーユの言動も、反抗期まっしぐ
らだった私には大人達に対する代弁者に思えなくもありませんでした(当時は尾崎豊の「卒業」が
大ヒットしていましたし、大人に反抗するのが格好いいという風潮があったのも確かです)。ただそ
れはあくまでマイナーでニッチで、けして一般的に理解されるようなものではないと、そう思ってい
たものです。ですが今や「Z」はファーストガンダムに次ぐ人気作という評価が定着しています。そ
れは単に時代の移り変わりによるものなのか、はたまた時代が「Z」に追いついたのかは分かりま
せんが、少なくとも富野監督がインタビューで再三卑下するほどには駄作ではないと、そんな気が
します。「Z」が好きだ、「Z」は面白いと公言する人がこれだけいる今ならば、もうちょっと「Zガンダ
ム」を生み出したことを誇っても良いのではないかと、そう思うのですが・・・って、あれ、最後は富
野監督へのファンレターになってる?(苦笑)ともかく、「Zガンダム」は様々な意味で私に影響を与
えた作品で、今なお好きだと言える作品です。以上、結論らしい結論もありませんがこれにて雑感
終わりっ!

                                                                                                                (18/05/30)


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