雑感5 小説版第1巻について

 BS11での「Zガンダム」再放送(現在6話)に合わせて、思い出話をまたひとつ。本放送当時、か
なり早い時期に富野監督による小説版の1巻が発売されました。ファーストガンダムの小説版は
諸事情で殆どオリジナルな内容でしたが、小説版「Z」はアニメの放送とほぼ同時進行で刊行さ
れ、かつテレビシリーズのストーリーに即していたので、当時はアニメ版を補完する存在でもあり
ました。
 「Z」の1話が分かりにくかったということは以前書きましたけど、シャアのコロニー潜入から始ま
るアニメに対し、小説版はその前日譚とも言うべきエピソードに長いページを割いていて、かなり
分かりやすい導入部となっています。とりわけカミーユの心情描写は秀逸で、これを読んでいると
アニメ1話の突飛な言動にも納得できるものがあり、小説版を読んでいるか否かでカミーユの印
象がだいぶ変わると感じました。中学時代は中性的な顔立ちと名前からバカにされることが多く
ケンカが絶えなかったとか、教師への反抗心から授業中微動だにせずいたら(生徒を椅子に縛り
付けるしか能のない教師という意味を込めたつもりだったそうな)逆に模範的な生徒と勘違いされ
余計に周囲から孤立したとか、「Z」1話当日の朝に両親と口喧嘩したとか、そういうバックグラウ
ンドが丁寧に描かれています。
 シャアのほうもエゥーゴ結成のあたりから描かれていて、当初リックディアスをガンマ・ガンダム
と命名しようとしたエピソードは後に公式設定にも反映されていたり。他にも小説版の表紙は永
野護氏が担当していましたが、そこに描かれたオリジナルデザインのガンダムMk-2がエプシィ・
ガンダムと名を変えてMSVとして公式化されたりと、小説版発祥で現在公式設定となっているも
のが幾つかあったりします(一番大きいのはZガンダムにバイオセンサーが搭載されているとい
う設定でしょうか。小説版でのみ言及されていて、アニメでは「人の意志を力にすることができる」
としか語られていなかったのですが、現在では「スパロボ」等でも当たり前のようにその設定が使
われています)。
 小説版は当時講談社から発売され、新書版よりもやや大きいサイズの本でした。表紙や紙の質
感も奢っていて、アニメのノベライズとしては破格とも言える立派な装丁でした。中学生だった私
はアニメの小説が他の文学作品と肩を並べる扱いになったように感じられて、なんとなく嬉しくなっ
たものです(笑)。それだけに、現在広く普及しているスニーカー文庫版はありきたりなライトノベル
に見えてしまい少し残念だったり。
 小説版は当初全3巻とアナウンスされていましたが、1巻の時点でテレビシリーズ5話までの内
容しか消化しておらず、こんなペースで本当に完結するの?と思っていたら3巻発売時に「5巻ま
で延長します」と告知され、「やっぱりか」と思った記憶があります。はじめから全5巻のスニーカー
文庫版から読み始めた人は特に気にしないかもしれませんけど、リアルタイムで読んでいた身と
しては「本当に全部のストーリーを小説化できるの?」とハラハラした部分がありました。それと、
理由は不明ですがスニーカー文庫から再版する際に1巻のみ加筆修正が行われていて、講談社
版を繰り返し読んでいた私としては、いまだにスニーカー版1巻の文章には違和感を覚えてしまい
ます。と言うか色々と削られた箇所があるので、1巻に関してはできれば講談社版を読むことをお
勧めしたいところです(今となってはかなり難しい?)。
 てな感じで、今回は小説版についてあれこれと書いてみました。小説版に関しては他にも触れて
おきたいネタがあるので、いずれそのうちに、ということで。

                                                    (17/03/08)


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